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詐欺容疑の邦人逮捕が相次ぐカンボジア 特殊詐欺グループが拠点を置く事情

ByDowenAins

6月 24, 2024

ここ数年、カンボジアを拠点にする特殊詐欺グループに闇バイトで雇われたという特殊詐欺犯たちの逮捕が相次いでいる。  2023年4月にはカンボジアの南部のリゾートホテルに監禁状態にあったという日本人19人が現地の警察に拘束、日本に移送され、詐欺容疑で警視庁が逮捕。2023年9月にはカンボジアの8階建てのアパートに監禁されていた日本人25人が、現地当局に拘束、日本に移送、詐欺容疑で埼玉県警に逮捕された。容疑者たちは闇バイトなどで集められて現地に渡り、かけ子と呼ばれる電話詐欺の役割を果たしていたという。  なぜカンボジアなのか。ある情報番組では当時、犯罪ジャーナリストが「東南アジアのリゾート地だと観光客に紛れやすく、空いている時間にリゾートを楽しめるといえば勧誘しやすい」と説明。連続強盗事件の指示薬たちが何年も逃げていたことで注目されたフィリピンなど、東南アジアのリゾート地で暗躍する特殊詐欺グループが増えているらしい。フィリピンの裏事情に詳しい暴力団関係者は、「フィリピンでは金さえ払えば、警察官が警察の動きや地元の動きを知らせてくる。公務員に物を頼むのも金次第」と話し、現地に詳しいビジネスマンは「フィリピンで何かしようとするなら裏金が必要。金を渡せば思うように進む」と説明した。 「カンボジアでは、警察は制服を着たヤクザ、裁判官は法衣を着たたかり屋と思ったほうがいい」。そう話すのはカンボジアの弁護士事務所で、リーガルアドバイザーとして働く日本人S氏だ。彼はまずこう前置きする。「カンボジアは1970年代のポルポト政権下で当時の人口の4分の1が虐殺されたといいます。10年前の国民の平均年齢は23歳、みんな生きていくのに必死でした。今でも平均年齢は26.5歳。工場などの最低賃金は200ドルほどで12時間労働、週休1日です」という。 「カンボジアでは警察官も給料が安いので、ワイロを払わないと誰も動いてくれない。逆に金を払えば何でもやってくれる。大概の情報は入手できるし、ボディガードもやってくれる。便宜を図ってくれます。乱暴な言い方をすれば、逮捕するのも釈放するのも金次第。日本の特殊詐欺グループにとっては居心地がいいでしょうね」。フィリピンの警察事情とカンボジアのそれは、共通するところが多いようだ

「年に数回、お寺にいって懺悔さえすれば罪は許される」

 カンボジアで詐欺被害にあっても「犯人が誰か明確にわかっていれば、逮捕するのは簡単、警察に金を払って頼めばいい。そういう点でいえば、騙されてもワイロ次第で解決することができる。実際、話が違った、騙されたという相談は多いですよ」とS氏はいう。観光客が騙される事件も多く、特に日本人観光客が銀行で換金してきた100米ドル札を巡るトラブルは多いらしい。 「米ドルは偽札が多いこともありますが、店で100ドル札を出すと、まず店員が電気や光で透かして確認。偽札かもしれないから確認すると店の奥に入っていく。そこで渡した本物の100ドル札を偽札と交換し、店頭に戻って観光客に何食わぬ顔で”OK”と偽札を渡すんです」。この対策としてS氏は、100ドル札を使う前に札の番号を写真に撮ってから渡したほうがいいとアドバイスする。  だがそれ以上に特殊なのは司法の状況らしい。S氏は「カンボジアにはワイロや不正が多いですが、実は契約社会。契約は相互にきっちり交わす。契約書にはサインより拇印。ただカンボジアは翌日に法律を変えてしまうような国。ゴタゴタすることは多く、訴訟を起こして裁判となればやはり費用はかかります。ただそれは裁判費用というより、むしろ”裁判官費用”です。裁判官1人につき、だいたい500ドルは最低払います」。裁判官を金で買収するというより、ワイロを払わないと裁判がスムーズに進まないということのようだ。  カンボジアの司法制度は三審制。日本も三審制をとっており第一審、第二審の控訴審、第三審の上告審となる。「三審制だから裁判の度に、裁判官にワイロを払わなければならなくなる。日本でいうなら第一審で簡易裁判所や地方裁判所、第二審で高等裁判所、第三審で最高裁判所です。カンボジアも司法制度は同じで下級裁判所から高等裁判所へ移っていくのですが、その度に裁判官に金を払う。それも裁判に関わるすべての裁判官に払うことになる」と、S氏が指を折りながらその人数を数える。「だから、カンボジアの弁護士は、訴状に尽力するよりも、まず、裁判官との折衝が仕事なんです」という。  そのような状況についてカンボジア人はどう思っているか。S氏は「金を持っている人から金を取るのを当然と思っている人が私の周りでは少なくないんです。年に数回、お寺にいって懺悔さえすれば罪は許されると思っている人もいる」。特殊詐欺グループがここを拠点にしてしまうのも、そんな背景があるからだろうか。